山田和樹 東京藝術大学客員教授(指揮者)を講師としてお迎えし、二部構成で社会連携センター特別講座を開講した。
第一部では、「山田和樹客員教授による弦楽アンサンブルの公開レッスン」と題した講座が行われた。レッスンで使用する曲目は《セレナード第13番 ト長調 「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」 K. 525》が取り上げられ、弦楽の学生らが受講生となりレクチャーを受けた。「ソノリティは誰が作り出すか?」を学生と意見交換をしながら音楽を奏でる本質を解説したり、時折聴講者にも発言させ、奏者だけでなく聴衆者を巻き込みながらのレッスンが進められた。納得のいく音を作り出すまで徹底的に意見交換を交わし、あらゆる奏法を試し(あえて奏法を変えたり)、奏者自身に一つ一つの意識を持たせ考えながら演奏をするよう根気の入った指導が行われ、音楽を追求していった。
演奏における意識の考え方、いかに聴衆者をワクワクさせられるか、演奏する度に何らか変えていかないとならないという演奏者に求められるもの、聴くということはどういうことなのか等、限られた時間の中で参加者は多くのことを吸収できたことであろう。
聴講生も必死にメモを取る様子も見られ、アンサブルメンバーとして参加した学生にとっても、聴講生にとっても大変有意義な時間となった。
同日行われた第二部では、山田和樹客員教授のほかCBSO(バーミンガム市交響楽団)の前CEOであるStephen Maddock氏も登壇し「社会における音楽のあり方を考える」と題した講座が行われた。
CBSOのアウトリーチの成功事例の紹介やオーケストラの可能性、オーケストラと街の関係性と構築の仕方、プログラムの多様化や若年層に向けたアプローチ(新規顧客の獲得)の工夫、またCBSOの設立の歴史などの話がされた。その他にもコロナ禍を経てのコンサート動員の現状や、英国の音楽家の状況や求められるスキルなども共有され、藝大生も自身の活動と照らし合わせて今後の活動やキャリア形成にも参考となる情報が得られた。そして、Stephen氏のCBSO後の音楽教育に関する新たな取り組みやその取り組みにおける信念の話題も提供された。
CBSOの取り組みやその後の音楽教育での新たな挑戦等、社会における音楽のあり方を考える上で大切なことを惜しげもなく知見を共有いただき、藝大生にとって社会での活動および活躍を見据えて、行動を起こしていく上でとても参考となる講座内容であった。